初めてのマイ・バイク

 GN125Hはスズキのバイクで、中国で生産されており、日本に流通している新車で乗れるバイクの中でも格段に安上がりなバイクだ。
GN125は原付第二種で、ナンバープレートの色は桃色。いわゆるピンクナンバー。原付一種は普通自動車免許があれば乗ってもいいが、これは小型自動二輪免許以上の免許が必要。スクーターは右手をひねるだけで進むけど、GNはマニュアル車で、マニュアル車は左足を使って速度にあった適切なギアを選択する必要がある。面倒ですね。

 ほしいバイクがないわけではなかったけど、車を買っていたし金もなかった。車の保険の支払いにプラス年額1万未満で付けられるファミリーバイク特約は、125cc未満の保険が車と同等の条件で受けられるという特約で、車の保険にバイクの保険と出費ばかりでは手痛いので、この特約が使える125cc未満のものを買うというのは決まっていたし、バイク本体を買うまとまった金もない。となればもうGN125か、中国ヤマハのYB125SPくらいしか選択肢はない。モトチャンプ2018年2月号は50cc~250ccの小型バイクの販売しているカタログで、特にバイクに詳しくない人間には役に立った。毎年年始にこういうカタログを出しているみたい。

 最初のバイクは自分で整備したいから構造がシンプルなやつがいいとか、小さい排気量からステップアップするほうがいいってキアヌもそう言ってるからとか、いくつかそれらしい理由をこしらえることができるけど、結局は金がないからこいつを買ったのだ。

 家の近くのバイク屋さんにはGN125もYB125SPも在庫があった。どっちも20万を切るバイクで、それでもバイク文化に親しくない身としては、かつ車を30万という破格で手にした身としては、バイク、高くね? という意識が強くあった。店員さんと話すと、特にどちらも大きな差はないし、2つを正確に測って、ちがうとすれば、それは、デザインと価格の違いほどで、ちょっと見てくれがいい感じで3万高いよりはその浮かした3万でいいヘルメットや装備でもガソリン代の足しにでもしたほうが良くないか、というそそのかしをされ、見事YB125SPより3万安いGN125を購入したのだった。下見は院試後、買ったのは合格通知後。落ちてたら買わなかったのか? というわけではないけど、まあ、区切りとしてね。特に家族からのお祝いで乗れるわけではなく宅配のバイトの賃金がバイクになっただけ。バイクはバイクを呼ぶ。

 前述の通りGN125は安上がりで、車の保険で保険料も安く収まるので家族がいて大型バイクは買えない4,50代の元ライダー他に多く親しまれ、ネットに整備マニュアルも豊富にある。

 というわけで厳冬の2月21日、無事納車された。全体的に作りが教習所の教習用バイクより安っぽかった。

GN125の画像

 バイク屋からバイクを渡される時は、ガソリンが全然ない状態で渡される。知らなかったけど。だから、まずはガススタンドに行って給油するという洗礼を受ける。フルサービスなら勝手に店員さんが給油してくれるが、セルフスタンドだと自分でしないといけない。しかも教習所では給油の仕方なんかおしえてくれないし、車と違って割りとタンクキャップの開け方が統一されてない。アホかと。ガソリンをタンクに垂らしでもすると、そこからタンクの塗装の剥離が始まる。アボカド。

 給油をした後は、千葉市の方へ行って牛めしを食べたりベローチェに行ったりして帰ってきた。今となっては眠りながらでも逆立ちしながらでも運転できる距離になったけど、最初はビクビクしながら千葉まで行った記憶がある。ともあれ、小学生がチャリンコに乗れるようになったときよりも遥かに自由にどこまでもいける原動機付きチャリンコを手にしたのである。

GN125のすゝめ

とにかく安い!

 バイクって、思ったより高い。車はよくCMで100万とか200万とか300万とか言われてるのである程度かかるって想像はつく。翻ってバイク。CMが打たれない。知ろうとする努力も機会もないと全く関わりなく人生が終了する類のもの。バイク本体を中古で買おうとすると、30~50万くらいが割と見かける価格で、それ以下の中古車だとどこか悪いところがあったりしてちょっと不安になる感じ。で、ヘルメット、1~3万円。グローブ、1万くらい。今後のガソリン代、駐輪場代、整備費。そして二輪の免許を取るには、車の免許があれば10~15万程度、なければ17~20万くらいかかる。これで業界は若者の二輪離れの原因を探ってるので、どうしようもない。バイクに乗ろうとして頑張って30万ためて教習所行ったら免許証もらえてバイクを買う金がありません、てなる。勢いだけじゃなくマジで乗りたいという強いお気持ちがなきゃまず食指が伸びない。灰ジャさんはモテたくてバイクの免許を取りましたが……。 話がそれた。バイクに乗ろうとしただけでカネがかかるので、本体代の安いGNは選択肢として良いよ、という話。

維持費も安い!

 バイクって思ったより維持費がかかる。まず、毎年、軽自動車税を収めないといけない。一般的なバイクは3600円か6000円。GN125は原付第二種で、2400円。ちなみにただの原付だと2000円、灰ジャカーは45,000円である。つら。
 自動車重量税という税もあるが、GN125は原付なので払わなくていい。普通のバイクだと年2500円かかったりする。
 次に、保険。自動車などはCMでやってるチューリッヒやソニー損保などの任意保険とは別に加入が義務の自賠責保険というのがある。払ってますよってステッカーがないともれなく制服を着た方々とサイン会などが行われるが、割りと小さいし見逃されとるんちゃうかって思うよね。12ヶ月分払ったり、36ヶ月分まとめて払ったりでき、まとめて払うほうがお得になるが、12ヶ月で比べてみよう。一般的なバイクだと1~1.3万程度になるが、原付第二種は原付と一緒で7500円程度。任意保険は入らなくてもいい選択肢もあるけど、道路を走る以上入っとくのが良い。これが年数万(人によって条件が変わって価格が変動するので一概に言えない)だが、家族が車を持っていて、車の任意保険に入ってれば、ファミリーバイク特約をプラスしてもらうことで、保険に加入したのと同じ効果が得られる。カードゲームみたいですね。この特約は年1万円もしないし、どの原付でも適用されるし家族全員に効果が得られる。間違いなく禁止カード級。
 あと、走ったぶ~~んだけ必要になってくる、ガソリン代。排気量が小さいほど燃費が良くなる。GNはガソリン1リットルで40~50kmは走る。わしは1リットルのコカ・コーラでどこまで走れるんだろう……。140円で50km動けるんだから、人間よりも効率がいい。車はリッター20kmとかそこいらなので、毎回複数人乗るわけでないならGN125のほうが燃費は圧倒的。バイクは神の乗り物。1万円あれば稚内から沖縄まで行ける計算。計算上なので実際には行けないが。

小排気量!

 GN125は、排気量が125ccと、交通社会の中では排気量が小さい。だから維持費の面で優遇がある。
 右手をひねってGNのアクセルをフルスロットルにしようとしても80km/hには届かないくらいが限界だし(メーター上は届くが実速度はもう少し下)、アクセルをミスって急にひねっても急発進して身体が持ってかれて投げ飛ばされることもない。 まあスプロケット変えちゃえば急加速できるけど

いろいろ楽!

 楽しい、ではなく、らく。イージー。イージーライダー。もちろん楽しくもあるが。
 一つに、足つきの良さ。バイクのシート高が高いと、短足にとって赤信号時などで停止しているのが苦行の三角木馬タイムになる。GNはそんなこともなく、名前からも腹が長いことが決定されてしまったワタクシ~その名の運命(さだめ)~でも、かかとまでちゃんとつく。
 二つ目、シートが柔らかい。バイクのシートは長時間座ってる/乗ってると硬くて痛くなるってことが結構ありがちだが、GNはクッション性が高い。何時間でも乗れる。大學の講義室の椅子を全部GNに変えるべきだと思う。これに慣れると別のバイクが辛く感じやすいので、乗り換えして楽しめなくなるポイントかもしれないが、最初のバイクから辛い思いをするより、最初くらいは楽しませる、楽させるのが沼への引きずりこみやすさにつながると思う。
 三つ目、がとおる。姿勢が楽。前傾姿勢を取らなきゃいけないバイクがある中、楽な姿勢で乗れる。

ローテク!

 ハイテクなものは、修理やメンテナンスもバイク屋に頼まなくてはいけない。一方、構造が単純なローテクなものであれば、自分である程度整備したり修理したりして、なんとかすることができる。どちらがよいだろうか。バイクとはいえ勢いつけたら人を殺せるし重大事故の引き金にもなるんやぞ、ハイテクなもん買ってバイク屋に任せるのが交通社会人としての責務じゃろがい! ローテクですね。いずれ高級でハイテクなものに乗るとしても単純な構造から学んだ知識は裏切りません。


 こんな感じで、GN125にはたくさんの魅力があります。GNじゃなくていいからみんなもバイクに乗ろう!